精霊流しのすべて

精霊流しとは


 精霊流しという行事は、全国に様々あるようですが、長崎の精霊流しほど風変わりなものもないでしょう。長崎では、初盆を迎えたお家で精霊船をつくります。全長10メートルを越すような大きなものから、ひとりで軽く肩にかつげるくらいの小さなものまでありますが、亡くなった人の御霊を送る気持ちは皆同じだと思います。江戸時代に描かれた『長崎名勝図絵』などによると、元来の船は1〜6人くらいでかつぐスタイルであったようです。明治に入るとだんだん船が巨大化しはじめ、明治20〜30年代頃に確立されたスタイルが現在のものの原形となっているようです。


姫家の精霊船&関係者集合の図

 本来、船は藁や竹、藁縄などを用いて造られました。江戸期くらいまでは竹で船の形を作り、麦わらであんだ、1メートルから1メートル50センチくらいの大きさの船を市場などで購入し、それぞれの家で装飾を施していたようです。竹などで胴の上部に家を作り、中央に帆柱を立て、五彩七色の紙を短冊型に切り六字の名号、七字の題目、仏画などをかいて帆柱に結びつける。家の屋根などに色紙を貼ったり、芭蕉の葉などをふいたり。舳先部分は杉の葉などで蔽ってそれに線香筒などを差し込んでおく……そのようなスタイルだったようです。なんともエコロジカルですね。さて、現在のスタイルを説明する前に、長崎のお盆のお墓参りスタイルについてお話いたしましょう。


初盆の新しい提灯をセッティング

 8月14、15日はお墓参りの日です。初盆のお家は13日と16日にもお参りをします。お盆には、お墓に提灯をつるします(初盆には提灯を新調するのが習わしのようです)。長崎のお墓にはちゃんと提灯つるし用の竿を立てる穴があります。夕方頃から親族が集まり、掃除をしたり、お花やお水を替えたりなどの準備をはじめ、夕刻になったら提灯に火を入れ、用意してきたお弁当やお酒などで宴会をはじめます。そしておもむろに新地(中華街)などで仕入れておいた花火をはじめます。暗くなる前からやびや(ロケット花火)を上げたり、パラシュート花火を上げたりもします。もう子供大喜び。花火と食料がなくなるまで宴会は続きます。皆、自分の家だけでなく、親戚のお墓などにも廻ってお参りをします。親族が集まってご先祖様と一緒に宴会をするといった感覚でしょうか。
 長崎は平地が少ないので、たいていの墓地は山の斜面にあります。下から見上げても、上から見下ろしても、あちこちのお家のお墓のにぎやかな様子がうかがえます。お盆の墓地の夜の景色は、提灯や花火の火で美しく飾られ、えもいわれぬ美しさです。これが長崎のお盆のお墓参りです。


提灯に火が入りました


つぎのページへ

長崎雑記帳