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平成11年くんち |
お諏訪さんの近所ではセミが鳴いておりました。そのくらい暑い日でした。それでも私はカッコ悪い日焼けをしてしまったショックにふらつきつつ、今日も追っかけです。ターゲットはまだ町なかで遭遇していない鯨と御朱印船!お諏訪さん近辺〜会える確率の高そうな丸山町辺りへ行ってみますと、またしても栄町と桶屋町に遭遇。ついでに船大工町と本石灰町の船格納庫を発見。地元の盛り上がっている様子に心が浮き立ちます。
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左:栄町の阿蘭陀万才 右:桶屋町の本踊(遭遇現場はカステラの福砂屋本店前)さらに鯨と御朱印船を求めて出島町〜江戸町をさまよい、ようやく遠くから聞こえてくる御朱印船のエキゾチックな鳴り物の音をキャッチ!すかさず走って追いかけます。御朱印船はその昔、アジアの海を股に掛けて活躍した荒木宗太郎という長崎の貿易商が、ベトナムの王女をお嫁さんにして長崎へ帰ってきた時の様子を再現した出し物です(その際の行列がどんなに華麗だったかを記した記録は残っていないけれど、長崎には豪華で賑やかな様を「アニオーさんの行列のごたる」と例えていう表現が残っています)。しかし私が船に追いついた時、船主である荒木宗太郎とアニオーさんは不在でちょっとさみしい印象でしたが、赤くて壮麗な船体が美しく、逆さVOC印がおしゃれでした。
くんち後だいぶたってから白石一郎の短編に「朱印船の花嫁」(文春文庫「切腹」収録)というタイトルのものを見つけ、思わず熱くなってしまいました。宗太郎とアニオーさんの出会いやその後が(おそらく)史実に忠実に描かれています。くんち前に読んでおけば、いっそう趣きが増したかもしれません。鎖国が厳しくなる以前の、朱印船貿易が盛んだった頃の長崎の空気が伝わってきます。ぜひ御一読を。
探し回ってようやく出会えた御朱印船