平成12年くんち

平成12年くんち・銀屋町


鯱太鼓

 開かれた当初は白銀町・新白銀町と呼ばれていましたが、寛永頃の地図には銀屋町・新銀屋町とあり、正保年間の地図には新銀屋町の町名はなくなり銀屋町のみの町名が記してあるそうです。その名のとおり、金銀細工職人が多く住んでいた町でした。

 その昔、尾張徳川家の御用達であったということもあり、傘鉾の飾(だし)は天に昇ろうとしている金色の鯱(しゃち)です。鯱は唐渡りの香炉の飾りのモチーフとしても長崎を代表するものであったということです。金色の鯱のまわりには金銀の水しぶきがゆらゆらと揺れるように取り付けてあります。輪はビロードで、銅版切抜き文字(純金焼付け)による町名が貼りつけてあります。流石!金工職人の町…。垂(たれ)には荒波が描かれています。
 この写真はくんち期間中に寺町を散歩していた時、仏壇屋さんで傘鉾の手入れをしていらっしゃるところに偶然行き当たり、撮らせていただいたものです。とても間近で飾を見せていただいたのですが、くもりひとつなく磨き上げられてピカピカしていました。しぶきの揺れるところがたまらなくカッコイイです!!と言ったら、傘鉾棟梁さん達は笑ってくださいました。ほんと、自慢の傘鉾ですよね。

 鯱がくわえている紫色のものは印綬の組紐のようです。この抑えられた配色が渋くて素敵です。
 傘鉾が進む時、チリン、チリンと鳴る鈴が中に取り付けてあるのも見せてくださいました。この音をきれいに鳴らすのはとても技術のいることなのだそうです。いいんですよね、この鈴の音がまた…。右の写真は心棒の下の部分、重しの一文銭を取り付けていらっしゃるところです。


 銀屋町は戦前、尾張候のお鷹狩りを模した大名行列「鷹狩りの通り物」を奉納していました。その豪華絢爛さは有名であったそうです。昭和60年に21年ぶりに新たに鯱太鼓を奉納されました。

  古代中国には「東の方角大海中に神仙の住む国があり、そこは不老長寿の世界なり」という伝承がありました。その大海中に棲む神仙の鯱が海原を裂き天空めざして昇る時「蓬莱の鯱」となり、やがて蒼天に至り「黄金の龍」となり、人々に「吉祥」を招くという「蓬莱鯱(ほうらいこ)伝説」があります。それを据太鼓と山車により表現したものが鯱太鼓です。はじめに据太鼓の奉納があり、山車が登場します。


   


 据太鼓には女性の方も参加してらっしゃいました。とても力強くて美しいです。熱烈なファンになってしまいました。太鼓のリズムも変化に富み、まったく飽きるということがありません。演奏される方の真剣な表情、姿勢、パワーに圧倒されます。


 山車は担ぎ手さん達の唄とともに登場します。山車には櫓太鼓の子供達が乗っています。唄は口伝えで伝承されているものなのだそうです。「ハァ〜祝いめでたや(ソーレ)諏訪ん社詣て(ヨーイ)ヤンサのエ〜、ホ〜エ、ドコイエ〜」という「祝いめでた」をはじめ、「木遣りうた」等など。特に「ホーライコー」という掛け声が耳に残ります。くんち終了後だいぶ経ってからもよみがえるほどでした。

 そろいの法被がたまりません。白と黒のコントラストが目に鮮やかです。担ぎ手さん達の動きはみごとにピタリとそろっていて、キビキビとして、最高に男前です。

 山車は前後や左右に動いたり、回ったり、空中に放り投げられたりします。担ぐ方向を変える時は一斉に合図にあわせて担ぎ手さんが持ち手を変えたりします。その呼吸のあった動きには感動します。山車の重量は約1トンにもなるとききました。ちょっと間違えれば大変なことになります。皆さんの懸命な表情には気合がみなぎっています。
 写真は山車が宙に浮かんだ瞬間です。手の空いた一瞬に担ぎ手さん達が手を打ち、落ちてきた山車を片手ではっしと受け止めます!息を飲む瞬間です。これで惚れなきゃ女じゃないです。掛け声をあげてポーズを決める櫓太鼓の子供達もカッコイイです。自分の子も(いないけど)乗せたくなります。

 山車が動くたびに揺れて煌く鯱と水しぶき。唄の意味と詞が分かればより理解が深まって、一緒に歌えて、盛りあがれるだろうなあ〜〜。

 すっかり鯱太鼓バカになった私は、庭先回りを夢中で追いかけてしまいました。幸い福砂屋本店前と大丸前という、庭先回りでもクライマックスにあたる場所で見物することができました。下の写真は崇福寺前付近で遭遇した時のものです(たぶん)。
 実は寺町散策の途中にお寺(皓台寺だったような)の入り口付近で太鼓の手入れをしていらっしゃる据太鼓の皆さんを見かけてしまったのです。私は勇気を振り絞って、憧れの太鼓のお姉様に声をかけ、一緒に写真を撮らせていただきました。鯱太鼓最高です!とか、あがってしまって妙なことしか言えませんでしたが、思いのたけを聞いていただきました。お姉様は優しく接してくださったばかりでなく、駐車してあったバンの中から手拭いを取り出して、私にくださいました。感激!感涙!ビバ鯱太鼓!!


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