平成12年くんち

平成12年くんち・麹屋町


川船

 寛永末年〜正保初年に麹屋町という名の町ができました。ここはかつて酒や味噌をつくるのに必要な麹をつくる職人さんが住んでいた町です。戦後、町の区分が変わり、町の一部が中島川に面したことから川船を奉納しています。

 飾(だし)は町名に因んで三枚の「麹ぶた」と、紅・白梅です。梅の古木と苔は本物(花は違います)、なんとも立派な枝ぶりです。麹ぶたに書かれた町名は幕末に長崎に来航した文人・王克三の手によるものです。ふたの裏側にも当て字で町名が印されています。輪はしめ縄。垂(たれ)は三社紋の散らされた綴綾織です。
 川船が入場する際、舳先に飾り船頭さんを載せています。飾り船頭さんはたいてい、もの心がついていない小さいお子さんが担当されますので、晴れの舞台でも寝ていたり、むずがったりすることがあるのですが、この船頭さんにはびっくり!入場の時、口をぱくぱくしているので何をしているのかと思ったら、きちんとお囃子にあわせて歌っていたのです!しっかりしてる!
 飾り船頭さんは船が定位置に着くと、降ろされます。そして入れ替わりに登場するのが網打ち船頭さんです。その名のとおり、船の舳先から網打ちをして魚を捕獲するという大仕事を担っています。本年その網打ち船頭さんを担当したのは堤由馬君、小学校5年生。お父さんは長崎で有名なイラストレーターさんです。堂々とした面構えはさすが九州男児。惚れます。根曳きさんが地面に置いたつくりものの魚を見事に網の中に捕らえました。大漁のおすそわけとして、飾り船頭さんから紅白のかまぼこがまきものとして配られました。

 網打ち船頭さんは私の知るかぎり、すべての網打ちを立派に成功させていました。出番中は始終キリリとした表情を変えず、凛々しかったですが、網打ちが終わって控えの席につく時、ちょっと嬉しそうににっこりしたのが印象的でした。将来が楽しみな少年です。


 網打ちが終わると、いよいよ船回しです。お兄さん達も気合十分。真剣な面持ちです。それにしても着物の美しいこと!根曳きさん達の着物には鮮やかな水色に緋鯉が踊り、采振りさん達のものには紺色に真鯉が踊っています。今年より船に改良が加わり、船の上の緋鯉と真鯉に細かい水しぶきがかかる仕掛けになっています。

 威勢良く回る船の中で懸命に鳴り物を演奏する子供達にも拍手!
 根曳きさん達の着物のすそは船もののお約束どおり、波模様です。帯も粋な波模様になっています。船が激しく回ると、着物のすそも翻り、荒々しく波打つ川面を演出します。

 何度目かの「モッテコイ」で片肌を脱ぎ、必死に船を回すお兄さん達です。


 庭先回り中の川船の方々。あんまり着物が美しいので、撮ってしまいました。

 これだけのものを用意するのにどれだけかかったのでしょう??つい無粋な事を考えてしまいます…。だって、キレイなんだもん。こうして見ると、手ぬぐいの模様は傘鉾に因んだ梅、色は着物に合わせて白・紺・赤となっているのがよくわかります。かっちょいい…!!


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長崎雑記帳